雷句誠です。
さて、お時間が少し出来たので、久々のブログ更新となります。
今回、「著作者人格権」について書きたいと思います。
著作者(作家のことですね)は、作品を創作すると、「著作権」が自動的に与えられます。
皆さんが知ってる著作権は多分「著作財産権」の方だと思います。
著作物(作品)を使って、お金を得る権利です。複製権、上映権、上演権、公衆送信権、展示権等があります。
そしてもう一つ、著作権には「著作者人格権」と言うのがあります。
実はこの権利はとても大切で、強い権利となるのですね。
☆同一性保持権(作品の内容は著作者以外に変更できない権利、例えば文章など、句読点一つも追加したり削除させることができません。)
詳しくはこちらのサイトへ著作権情報センター
で、大切なことがありまして、
この著作者人格権は一身専属権で他人に譲渡することが出来ません。
著作者、そして創作した作品を守ってくれるとても大切な権利です。
先日、とある会社の電子書籍(コミック)の契約書で、
「著作者人格権を執行しない」という項目がある、とのことを目にしました。
私はこれを見て、まず「ありえない!」と思ったのですね。
文章だけ見れば、勝手に作品の内容を書き換えられても、自分とは全く別の人物の名前で作品が発表されても、何も文句を言えない。そうとも取れる契約書です。
私は自分がビジネス著作権検定をとった時の先生と、経済産業省のデジタルコンテンツ協会の方に、こんな契約書はありえるのか聞いてみました。
両方の方からお答えを頂き、お二人とも、この契約書の文章に難色を示しました。
まず「執行しない」なんて文言はまずおかしい。
同じ意味で使うとしても「行使しない」とのことです。
「不行使特約」というのは、著作者人格権にもあるようです。
例えばゴーストライターが書いた文章を買い取った時、そのゴーストライターが「その文章を書いたのは実は私です」と、言わないように不行使特約を結びます。
我々漫画家がマンガを雑誌に載っける際に、誤字脱字がある、もしくは雑誌に載せられないような差別表現が入っている。そのような時に変更する等、私達漫画家も著作者人格権を行使しません。不行使です。
でもそれは、双方の利益のために了解するものであって、マンガのような創作性の高い著作物に対して、頭ごなしに「著作者人格権を執行しない」という契約はやはり考えられません。
ここで、日本書籍出版協会さんが作成している出版契約書のヒナ型の第7条を上げてみましょう。
第7条 (著作者人格権の尊重)
乙は、 本著作物の内容・表現または書名・題号等に変更を加える必要が生じた場合には、あらかじめ著作者の承諾を得なければならない。
日本書籍出版協会は、小学館、講談社、集英社など、日本の出版社さん達の協会です。
出版社さんの推奨するヒナ型でも、このように著作者人格権を尊重する契約の文章となっています。
電子の世界だと、ブログ等のサービスの利用規約の中に「著作者人格権を行使しない」 が入っている所もあるそうです。今回のこの電子コミックの「著作者人格権を執行しない」という文言も、この流れで電子畑の会社が、よく解らないのに契約書に入れ込んでしまっているのでは?との見解もありました。
もし、本当に悪意のある会社で、私達漫画家が法律もよく解らず、勝手にマンガの内容を改変されても「そう言う契約を結んでしまったから」 と、泣き寝入りするしか無い状態が起こることを想像すると、ちょっと、怖いですよね。
これを読んでくれている漫画家の皆さんも、これを機に著作者人格権と言うのを覚えていただけたらと思います。
この権利を覚えているだけでも、契約書を見た時に
「あ、この契約書、ちょっとおかしいな。この会社との仕事はマズいかな?」
と、感じることが出来ると思います。
今回のブログは以上となります。長々失礼いたしました。
最後にビジネス著作権検定をとったときの先生、経済産業省のデジタルコンテンツ協会様、アドバイスありがとうございました。
PS
最後にちょっとご紹介。私も持っているビジネス著作権検定、 この検定をとるための講義があるのですが、これがとてもタメになり、面白かったです。ビジネスにおける著作権の注意点や、間違い等、いろんなパターンを実際に起きた例や判例等を交えてお話ししてくれます。
漫画家の方で、もし興味と時間がありましたら、お勧めします。契約書を詳しく読む漫画家さんは少ないですが(汗)その契約書が理解でき、頭に入ってきますよ。
さて、お時間が少し出来たので、久々のブログ更新となります。
今回、「著作者人格権」について書きたいと思います。
著作者(作家のことですね)は、作品を創作すると、「著作権」が自動的に与えられます。
皆さんが知ってる著作権は多分「著作財産権」の方だと思います。
著作物(作品)を使って、お金を得る権利です。複製権、上映権、上演権、公衆送信権、展示権等があります。
これは、他人に譲渡することができます。
そしてもう一つ、著作権には「著作者人格権」と言うのがあります。
実はこの権利はとても大切で、強い権利となるのですね。
著作者人格権は、
☆公表権(作品を公表するかしないかを決める権利)
☆氏名表示権(氏名を表示するかしないかを決める権利、ペンネームを使うなら、その名前を決める権利)
☆公表権(作品を公表するかしないかを決める権利)
☆氏名表示権(氏名を表示するかしないかを決める権利、ペンネームを使うなら、その名前を決める権利)
☆同一性保持権(作品の内容は著作者以外に変更できない権利、例えば文章など、句読点一つも追加したり削除させることができません。)
詳しくはこちらのサイトへ著作権情報センター
で、大切なことがありまして、
この著作者人格権は一身専属権で他人に譲渡することが出来ません。
著作者、そして創作した作品を守ってくれるとても大切な権利です。
先日、とある会社の電子書籍(コミック)の契約書で、
「著作者人格権を執行しない」という項目がある、とのことを目にしました。
私はこれを見て、まず「ありえない!」と思ったのですね。
文章だけ見れば、勝手に作品の内容を書き換えられても、自分とは全く別の人物の名前で作品が発表されても、何も文句を言えない。そうとも取れる契約書です。
私は自分がビジネス著作権検定をとった時の先生と、経済産業省のデジタルコンテンツ協会の方に、こんな契約書はありえるのか聞いてみました。
両方の方からお答えを頂き、お二人とも、この契約書の文章に難色を示しました。
まず「執行しない」なんて文言はまずおかしい。
同じ意味で使うとしても「行使しない」とのことです。
「不行使特約」というのは、著作者人格権にもあるようです。
例えばゴーストライターが書いた文章を買い取った時、そのゴーストライターが「その文章を書いたのは実は私です」と、言わないように不行使特約を結びます。
我々漫画家がマンガを雑誌に載っける際に、誤字脱字がある、もしくは雑誌に載せられないような差別表現が入っている。そのような時に変更する等、私達漫画家も著作者人格権を行使しません。不行使です。
でもそれは、双方の利益のために了解するものであって、マンガのような創作性の高い著作物に対して、頭ごなしに「著作者人格権を執行しない」という契約はやはり考えられません。
不行使特約も
「(原作)そのまま使わせてもらう」という意味で、又は「原作を元に二次的著作物を創作させてもらう」という意味で、なんとか不行使特約が許されと解されており(通説・判例)、ご指摘のように、著作権の譲受人や出版社による自由な改変など「著作者人格権を勝手に行使させてもらう」という意味であれば「無効」です。
等とのアドバイスを頂きました。
「(原作)そのまま使わせてもらう」という意味で、又は「原作を元に二次的著作物を創作させてもらう」という意味で、なんとか不行使特約が許されと解されており(通説・判例)、ご指摘のように、著作権の譲受人や出版社による自由な改変など「著作者人格権を勝手に行使させてもらう」という意味であれば「無効」です。
等とのアドバイスを頂きました。
ここで、日本書籍出版協会さんが作成している出版契約書のヒナ型の第7条を上げてみましょう。
第7条 (著作者人格権の尊重)
乙は、 本著作物の内容・表現または書名・題号等に変更を加える必要が生じた場合には、あらかじめ著作者の承諾を得なければならない。
日本書籍出版協会は、小学館、講談社、集英社など、日本の出版社さん達の協会です。
出版社さんの推奨するヒナ型でも、このように著作者人格権を尊重する契約の文章となっています。
電子の世界だと、ブログ等のサービスの利用規約の中に「著作者人格権を行使しない」 が入っている所もあるそうです。今回のこの電子コミックの「著作者人格権を執行しない」という文言も、この流れで電子畑の会社が、よく解らないのに契約書に入れ込んでしまっているのでは?との見解もありました。
もし、本当に悪意のある会社で、私達漫画家が法律もよく解らず、勝手にマンガの内容を改変されても「そう言う契約を結んでしまったから」 と、泣き寝入りするしか無い状態が起こることを想像すると、ちょっと、怖いですよね。
これを読んでくれている漫画家の皆さんも、これを機に著作者人格権と言うのを覚えていただけたらと思います。
この権利を覚えているだけでも、契約書を見た時に
「あ、この契約書、ちょっとおかしいな。この会社との仕事はマズいかな?」
と、感じることが出来ると思います。
今回のブログは以上となります。長々失礼いたしました。
最後にビジネス著作権検定をとったときの先生、経済産業省のデジタルコンテンツ協会様、アドバイスありがとうございました。
PS
最後にちょっとご紹介。私も持っているビジネス著作権検定、 この検定をとるための講義があるのですが、これがとてもタメになり、面白かったです。ビジネスにおける著作権の注意点や、間違い等、いろんなパターンを実際に起きた例や判例等を交えてお話ししてくれます。
漫画家の方で、もし興味と時間がありましたら、お勧めします。契約書を詳しく読む漫画家さんは少ないですが(汗)その契約書が理解でき、頭に入ってきますよ。